「定年後に旅しながら働くって、60代でも現実的なのだろうか。でも体力が心配だし、ちゃんと採用してもらえるのかも分からない」
おてつたびに興味を持ちながらも、踏み出せずにいる60代・50代の方は少なくありません。先に結論をお伝えします。
おてつたびには年齢上限はなく、50歳以上の参加者は近年急増しています。株式会社おてつたびの公式プレスリリース(2024年9月)によれば、50歳以上の参加者比率は2021年12月時点の8%から2023年12月には23%まで上昇しています。
ただし「60代でも参加できる」と「60代に向いている」は別の話です。この記事では体力・報酬・採用の三つの軸で実態を整理し、おてつたびが60代のどんな目的に向くか、向かない場合はどんな選択肢があるかを中立にお伝えします。
この記事を読んだ後、「自分はどちらの目的か」「体力的にどの案件なら合いそうか」を確認する手がかりとして使ってください。
おてつたびとはどんなサービスか
おてつたびは「お手伝いをしながら、知らない地域を旅する」をコンセプトとした旅バイト・求人プラットフォームです。農業・旅館・宿泊施設・観光施設などの受け入れ先が求人を掲載し、参加者が応募して短期間働く仕組みです(おてつたび公式サイトの説明による)。
仕組みと費用負担
費用と報酬の基本的な枠組みは次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録・利用料 | 無料 |
| 報酬 | 各都道府県の最低賃金水準を目安に求人ごとに設定 |
| 宿泊費 | 原則として受け入れ先が無償提供(求人によっては有償の場合あり) |
| 食費 | 求人によって異なる(まかないあり・なしは求人に明記) |
| 交通費 | 原則として自己負担 |
最低賃金水準の報酬が多く、交通費は自己負担という点は、「稼ぐ」より「旅費・滞在費を抑えながら地域体験をする」という使い方に適しています。この点が、後半でお伝えする派遣型リゾートバイトとの大きな違いになります。
期間・案件の特徴
求人の期間は数日から2か月程度が多く、農業・旅館・観光施設など業種は幅広くあります。「年齢不問」タグの求人では幅広い年齢層の参加を積極的に歓迎しており、おてつたび公式の求人ページから「年齢不問」で絞り込むことができます。
▶ おてつたびと派遣型リゾートバイトの違い・選び方の全体像は「おてつたびとリゾートバイトの違い(シニア版)」でまとめています。
60代の参加実態——増えているが、目的が重要
参加者の年齢層と動機
株式会社おてつたびが2024年に実施した50歳以上の参加者へのアンケート(回答者230人・全国47都道府県、2024年9月公表プレスリリースによる)では、参加動機の上位が次のように示されています。
- 日本各地のさまざまな地域に行ってみたい
- 新しい経験がしたい
- 旅行や温泉が好きだから
- 滞在費や旅費を節約できる
「生活費を稼ぐ」という動機は上位ではなく、旅・体験・出会いを中心とした目的で参加しているシニアが多いことが読み取れます。
この事実は、60代がおてつたびに期待するものを考えるうえで重要な判断材料です。「旅を楽しみながら、滞在費の一部を補いたい」という使い方には向く一方、「毎月一定の収入を継続して得たい」という目的には構造的に向きにくいサービスです。
60代参加者のリアルな声(公式インタビューより)
おてつたびの公式メディアに掲載されたインタビュー(おてつびとインタビューVol.26・おてつたびnote公式)では、65歳の西百合子さんが北海道のホテル・福岡の農場などに参加した体験を語っています。西さんは「これまでの旅行とは全然違うものが得られるんですよね」と振り返り、その醍醐味をこう表現しています。
「その地域の中にどっぷり浸かって、本当にその時期の、その時の、その場所でしか味わえないことが楽しめる。それがおてつたびの醍醐味だと思いますね」
同氏は体力や生活のペースを確かめながら段階的に参加することを勧めており、最初は1週間程度の短期募集から試すのもよいと語っています。
また公式メディア(おてつびとインタビューVol.43、2025年6月公開)では、ANAを38年間務めた後、63歳のときにおてつたびに初参加した丸田昌司さん(取材時67歳)が、寺院での清掃・みずがき山 森の農園キャンプ場での接客・清掃・ドラム缶風呂の火起こし・シャインマスカットの摘粒作業などを経験した後、民泊事業を立ち上げた経緯が紹介されています。
いずれも収入より「経験と出会い」を主な目的として語っている点が共通しています。
体力について——案件の差が大きい
おてつたびの仕事は「体力を使う・使わない」の振れ幅が大きいのが特徴です。農繁期の収穫補助・旅館の配膳・清掃などは体力負担が高くなる場合があります。
体力負担が比較的少ない案件の傾向
| 仕事の種類 | 業務の特徴 | 体力の目安 |
|---|---|---|
| 旅館・宿のフロント補助・接客 | 受付対応・鍵の管理・案内など | 低〜中 |
| 農産物の選別・軽い包装作業 | 座って行える作業が中心の案件もあり | 低〜中 |
| 観光施設の受付・案内 | 立ち仕事だが重労働は少ない | 低〜中 |
| 寺社・地域施設での清掃補助 | ゆっくりしたペースで進められる場合も | 中 |
| 体力負担が大きくなりやすい仕事 | 注意点 |
|---|---|
| 農繁期の収穫・畑作業(ぶどう・野菜等) | かがむ姿勢・長時間の作業が続くことがある |
| 旅館の客室清掃(繁忙期) | ベッドメイクや浴室清掃を短時間でこなす場面も |
| キャンプ場・アウトドア施設のスタッフ | 屋外作業・重いものを運ぶ場面あり |
「年齢不問」タグがついた案件でも、業務の内容・ペース・繁忙期の忙しさは求人ごとに大きく異なります。応募前に「体力に自信がない部分があるが参加したい」と受け入れ先に伝えて業務内容を確認することで、入居後のミスマッチを防ぎやすくなります。
収入の現実——「稼ぐ」目的で使う場合の注意点
報酬の水準と構造
おてつたびの報酬は各都道府県の最低賃金水準を目安に設定されているケースが多く、一般的な時給水準は地域の最低賃金に準じます。宿泊費が原則無償という点で「実質的な手取り」はその分高くなりますが、交通費が自己負担のため、遠方から参加する場合は往復の交通費を差し引いた実収入を計算しておく必要があります。
関西テレビ(カンテレ)の特集報道(2025年10月)では、20〜50代の2名が奈良県で23日間参加し報酬13万円という事例が紹介されています(参加者は56歳・42歳)。滞在費が浮く構造が実質的な手取りを支えているケースです。
継続収入としての構造的な限界
おてつたびは短期のお手伝い型サービスであるため、次のような制約があります。
- 同じ受け入れ先に継続して長期滞在できる保証はない
- 求人の空き状況・地域・時期によって収入が変動する
- 交通費自己負担のため、頻繁に移動すると収支が圧迫される
「年金を補いながら毎月安定して稼ぎたい」という目的には、派遣型リゾートバイトのほうが構造的に向いています。寮費補助・継続勤務・コーディネーターによる就業サポートがある派遣型と、おてつたびの使い分けは後述します。
採用について——年齢よりも「目的の一致」が重要
年齢制限の有無
おてつたびに法律上の年齢上限はありません。「年齢不問」タグの求人は、幅広い年齢層の参加を積極的に歓迎していることを示しています。
ただし、個々の求人は受け入れ先が条件を設定するため、年齢や体力の希望条件は求人ページまたは応募時に確認するのが確実です。「何歳でも必ず採用される」ということは保証できません。前述のとおり50歳以上の参加者比率は2021年比で増加しており(公式プレスリリースより)、シニアの参加実績がある受け入れ先は存在します。
JR東日本の「大人の休日倶楽部」とおてつたびが連携した取り組みでは、「歴史ある旅館や観光施設など、シニアの経験や気配りが活きる現場を厳選してマッチングを促進する」という方向性が示されており(大人の休日倶楽部×おてつたびが贈る新しい鉄道旅のカタチ、JREメディア、2025年11月)、シニア向けの受け入れが意識的に進んでいることがわかります。
採用されやすくなるための確認ポイント
応募時に次の点を事前に伝えておくと、受け入れ先との認識のずれを防ぎやすくなります。
- 体力面で得意・不得意な作業の種類
- 希望する滞在期間
- 個室の要否(西さんのインタビューにも「一つだけ譲れない条件があって、それは1人部屋ですね」とある)
- 服薬・持病がある場合はその内容
おてつたびと派遣型リゾートバイト——目的で使い分ける
60代の「旅しながら働く」という希望に対し、おてつたびと派遣型リゾートバイトはそれぞれ異なる強みを持っています。
| 比較軸 | おてつたび | 派遣型リゾートバイト |
|---|---|---|
| 主な目的 | 地域体験・旅・交流 | 収入確保・安定就業 |
| 報酬水準 | 最低賃金水準が中心 | 案件・地域により幅あり |
| 宿泊費 | 原則無償(求人による) | 寮費補助・無償が多い |
| 交通費 | 原則自己負担 | 一部支給の案件あり |
| 継続性 | 短期中心・都度応募 | 数か月〜継続も可能 |
| サポート体制 | 受け入れ先と直接やりとり | コーディネーターが仲介 |
| 向く60代 | 旅・体験・出会いが目的 | 収入を継続して積み上げたい |
「まず旅の雰囲気で地域体験をしてみたい」「滞在費を抑えながら各地を巡りたい」という目的にはおてつたびが向きます。一方で「毎月安定して稼ぎたい」「コーディネーター経由で求人を探したい」という場合は、受け入れ先と直接やりとりするおてつたびより派遣型のほうが仕組みとして合っています(ただし派遣会社ごとにサポート内容は異なります)。
60代のリゾートバイト全般(採用実態・体力・職種・派遣会社選び)については「60歳以上のリゾートバイト完全ガイド」でまとめています。
派遣型を比較検討したい方は「シニアに優しいリゾートバイト派遣会社おすすめ比較」をご覧ください。年齢条件・寮環境・サポート体制を並べて整理しています。
よくある質問
Q. おてつたびは60代でも参加できますか?
A. おてつたびには法律上の年齢上限はなく、「年齢不問」タグの求人も設けられています。2021年12月時点で8%だった50歳以上の参加者比率が2023年12月には23%まで上昇したことが公式プレスリリースで示されており、シニア層の参加は増えています。ただし個々の求人は受け入れ先が条件を設定するため、年齢や体力面の希望は応募前に確認するのが確実です。
Q. おてつたびの報酬はどのくらいですか?交通費はもらえますか?
A. 報酬は各都道府県の最低賃金水準を目安に求人ごとに設定されており、宿泊費は原則として受け入れ先が無償提供します(求人によっては有償の場合もあります)。交通費は原則として自己負担です。生活費を稼ぐことよりも、旅費・滞在費を抑えながら地域体験をすることが主な使い方と言えます。
Q. 60代がおてつたびで体力的に向く仕事はどれですか?
A. 宿・旅館でのフロント補助・接客、農産物の選別・軽い収穫補助、施設の受付・案内など、立ち仕事でも激しい重労働が少ない案件が体力負担の目安として挙げられます。求人によって業務の重さは大きく異なるため、応募前に「体力に自信がないが参加したい」と受け入れ先に伝えて業務内容を確認することをおすすめします。
Q. おてつたびと派遣型リゾートバイトの違いは何ですか?
A. おてつたびは地域体験・旅・交流を主な目的とした短期のお手伝い型サービスで、報酬は最低賃金水準・交通費自己負担が基本です。派遣型リゾートバイトは派遣会社がコーディネートし、寮費補助・交通費支給・継続勤務のある案件が多く、安定した収入を積み上げることを目的とした場合に向いています。
まとめ
- おてつたびに年齢上限はなく、50歳以上の参加者比率は2021年の8%から2023年には23%に増加している(公式プレスリリースより)
- 参加動機の上位は「地域に行ってみたい」「新しい経験がしたい」。生活費を稼ぐ目的は上位ではなく、旅・体験・出会いを中心とした使い方が主流
- 体力負担は案件によって大きく異なる。フロント補助・農産物選別・施設受付など比較的負担が少ない案件もあるが、農繁期の収穫や繁忙期の旅館清掃は負担が大きくなる場合もある
- 交通費は原則自己負担。遠方から参加する場合は往復交通費を考慮したうえで実収入を計算しておく
- 「旅・体験・交流が目的」ならおてつたびが向く。「安定した収入を継続して積み上げたい」なら、寮費補助・コーディネーターサポートのある派遣型リゾートバイトとの使い分けが現実的
「定年後に旅しながら地域と関わりたい」という目的が明確なら、おてつたびは年齢上限なし・年齢不問の求人もある選択肢です。ただし「稼ぎながら旅する」のか「旅をしながら少し補う」のかで、選ぶべきサービスは変わります。個々の求人は受け入れ先が条件を設定するため、参加前に業務内容・体力負担・期間を確認する手順は省かないでください。
▶ 派遣型リゾートバイトとおてつたびを比較したい方は「シニアに優しいリゾートバイト派遣会社おすすめ比較」へ。