「年金を受け取りながらリゾートバイトをしたら、年金がカットされてしまわないか」「確定申告が必要になるのか、自分でできるのか」「家族の扶養に入っているが、収入が増えると外れてしまうのか」——温泉地での住み込みに惹かれつつ、こうした不安でなかなか踏み出せない50・60代の方は少なくないはずです。
先にお伝えします。年金がカットされるケースは限定的です。確定申告が不要なケースも多く、還付で税金が戻ることもあります。制度を正しく把握すれば、損を避けやすくなります。
根拠は公的制度にあります。在職老齢年金の支給停止基準は2026年4月に月額65万円へ引き上げられました(厚生労働省・政府広報オンライン)。年金受給者の確定申告不要制度は国税庁が定める公的ルールです。この記事は、一次情報である公的機関の発表をもとに整理しています。
制度の詳細は年ごとに変わります。この記事の数値・要件は手続きの前に必ず公式(厚生労働省・国税庁・日本年金機構)で最新を確認してください。制度を正しく把握しておけば、損は防ぎやすくなります。この記事はそのための確認ポイントを整理しました。
50・60代がリゾートバイトのお金で感じる3つの不安
リゾートバイトに興味を持つ50・60代から、お金に関して特によく聞かれる不安は大きく3つあります。
- 年金が減らないか(在職老齢年金:収入が増えると年金が一部カットされる制度があると聞いた)
- 税金や確定申告が面倒にならないか(給与が増えると確定申告が必要になる?源泉徴収だけでは済まない?)
- 扶養を外れないか(家族の扶養に入っているが、収入が一定額を超えると外れてしまう?)
この3点をそれぞれ整理していきます。制度は複雑ですが、「自分の働き方ではどれが当てはまるか」を確認することが先決です。
年金は減る?在職老齢年金の仕組みと2026年4月からの変更
在職老齢年金の対象になる条件
在職老齢年金は、老齢厚生年金を受給しながら厚生年金に加入して働く人を対象とした制度です。働いた月の収入と年金の合計が一定基準を超えると、超えた分の一部が支給停止になる仕組みです。
ポイントは「厚生年金に加入して働く」という条件です。社会保険の加入要件(週所定労働時間20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月超の雇用見込みなど複数の条件の組み合わせ)を満たさない短期・短時間の働き方では、厚生年金に加入しないため在職老齢年金の計算には入りません。
また、国民年金(老齢基礎年金)は在職老齢年金のカット対象外です。厚生年金の上乗せ部分(老齢厚生年金)だけが調整の対象です。
2026年4月から基準額が65万円に引き上げ
改正法に規定された支給停止の基準額は月額62万円ですが、毎年度の物価・賃金スライドの結果、2026年4月の実際の適用額は月額65万円となっています(出典:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」・政府広報オンライン)。
計算の仕組みはこうです。「基本月額(受け取る老齢厚生年金の月額)+総報酬月額相当額(その月の給与+標準賞与の月割り額)」の合計が65万円以下であれば、年金は全額支給されます。65万円を超えた場合は「(合計額-65万円)÷2」が支給停止になります。
リゾートバイトの月給は職種・施設・勤務時間によって異なります。年金月額と給与の合計が月65万円を超えなければ年金は全額支給されるため、収入を抑えた働き方であれば年金がカットされる可能性は低くなります。一方で、フルタイムに近い高収入の勤務条件では基準を超えることもあります。自分の年金月額と求人の給与で一度試算してみることが大切です。
ただし「限定的」は「ゼロ」ではありません。自分の年金月額と想定収入を合算して、事前に年金事務所へ確認することをお勧めします。
| 参照ポイント | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 老齢厚生年金受給中かつ厚生年金加入して働く人 |
| 基準額(2026年4月〜) | 月額65万円 |
| 計算式 | 基本月額+総報酬月額相当額が65万円以下なら全額支給 |
| 国民年金(基礎年金) | カット対象外 |
| 短期・社保加入なしの働き方 | 在職老齢年金の計算対象にならない |
「65万円」は2026年度のスライド適用後の実額です。法律上の基準額は62万円で、毎年度スライド調整されます。最新の適用額は日本年金機構または年金事務所で確認してください。
出典:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」・政府広報オンライン
税金と確定申告:必要なケース・不要なケース
年金受給者に適用される「確定申告不要制度」
年金を受け取りながら給与収入も得る場合、確定申告が必要になるかどうかが気になる方は多いはずです。
国税庁は年金受給者向けの確定申告不要制度を定めています。以下の条件を両方満たす場合、所得税の確定申告は不要です。
- 公的年金等の収入金額の合計が年間400万円以下
- 公的年金等以外の所得(給与・リゾートバイト収入など)の合計が年間20万円以下
公的年金等以外の所得(リゾートバイトの給与所得など)の合計が年間20万円以下に収まる場合、年金受給者は確定申告不要制度の条件内に入り、所得税の申告は不要です。
ただし注意点が2つあります。
- 条件を超えた場合は確定申告が必要になります(2か所以上から給与を受け、年末調整されない給与とその他の所得の合計が20万円超の場合も同様)
- 住民税の申告は別途必要な場合があります(市区町村の窓口へ確認してください)
出典:国税庁
源泉徴収で天引きされた税金が「戻ってくる」こともある
給与として支払われる場合、雇用主が源泉徴収として所得税を天引きします。短期の働き方では年末調整が行われないことがあり、その場合は確定申告をしなければ還付を受けられないまま終わる可能性があります。
確定申告をすることで、天引きされた所得税の全部または一部が還付されるケースがあります。「確定申告は面倒」と思いがちですが、還付のために申告する価値がある場合もあります。
自分が確定申告をすべきかどうかの判断は、国税庁のウェブサイトや最寄りの税務署で確認できます。
確定申告の要否まとめ
| 状況 | 所得税の確定申告 |
|---|---|
| 年金400万円以下かつ給与など他の所得が年間20万円以下 | 不要(確定申告不要制度) |
| 給与など他の所得が年間20万円超 | 必要 |
| 2か所以上から給与を受け、年末調整されない分がある | 必要 |
| 源泉徴収済みで還付が見込める | 申告すると還付を受けられる |
出典:国税庁
扶養・社会保険:2025年改正で変わった点と短期の目安
2025年(令和7年度)税制改正で扶養の「壁」が動いた
2025年の税制改正(令和7年度)で、扶養親族・同一生計配偶者として認められる合計所得の要件が引き上げられました。
- 改正前:合計所得48万円以下(給与のみなら年収103万円以下)
- 改正後:合計所得58万円以下(給与のみなら年収換算で約123万円相当)
この変更により、従来の「103万円の壁」相当の水準が引き上げられ、少し収入が増えても所得税上の扶養から外れにくくなりました。なお、この改正は令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税に適用されます(令和7年11月以前の源泉徴収事務には旧基準が適用される点に注意してください)。
ただし、制度は複雑で年ごとに要件が変わる可能性があります。「2025年改正で壁が引き上げられた」という方向性は確かですが、自分のケースに当てはまる正確な要件は必ず国税庁または税務署・勤務先の担当者に最新の内容を確認してください。
出典:国税庁
社会保険の扶養(健康保険の被扶養者)は別の基準
税制上の扶養(所得税)と社会保険上の扶養(健康保険の被扶養者)は、判定基準が異なります。健康保険の被扶養者の収入要件は年収130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)が基本ですが、加入している健康保険組合によって運用が異なる場合があります。
リゾートバイトで収入が増えると社会保険の扶養から外れるリスクがあります。不安な場合は加入している健康保険の窓口に確認することをお勧めします。
短期の働き方と社会保険の加入要件
社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務は、以下の条件を総合的に判断して決まります。
- 週所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月超の雇用見込みがある
- 学生でない
これらの要件をすべて満たすと社会保険への加入が必要になり、在職老齢年金や扶養についてもあわせて確認が必要になります。短期・短時間の働き方であれば社会保険に加入しないケースが多く、その場合は在職老齢年金の計算対象にもなりません。
なお、月額賃金8.8万円以上の要件は2026年10月に撤廃が予定されています。撤廃後は週20時間以上・2か月超・学生でないの条件を満たせば月収にかかわらず社会保険加入対象となる見込みです。勤務時期によって判定基準が変わるため、必ず最新の要件を年金事務所または勤務先で確認してください。
社会保険加入の判定は状況によって異なります。勤務条件が決まった段階でコーディネーターや勤務先に確認することが大切です。
損しないための事前確認リスト
以下の項目は、登録時・応募時にコーディネーターや公式窓口に確認しておくと安心です。
コーディネーターに確認すること
- 勤務条件が社会保険の加入要件を満たすかどうか(週の労働時間・月額賃金・雇用期間)
- 年末調整の有無(調整されない場合は確定申告が必要になる可能性がある)
- 給与の支払い方法と源泉徴収票の発行時期
公式窓口で確認すること
- 在職老齢年金の具体的な影響:年金事務所または日本年金機構
- 確定申告の要否と還付の見込み:税務署または国税庁
- 健康保険の被扶養者の継続可否:加入している健康保険組合または協会けんぽ
- 住民税の申告が必要かどうか:市区町村の窓口
制度は改正されます。求人に応募する前に最新の情報を確認しておくと、収入の見込み違いや手続き漏れを防ぎやすくなります。
よくある質問
Q. リゾートバイトをすると年金は減りますか?
A. 厚生年金に加入して働く場合は在職老齢年金の計算対象になります。ただし2026年4月から支給停止の基準額が月額65万円に引き上げられたため、リゾートバイトの収入と年金月額の合計がこの水準を超えなければ年金は全額支給されます。国民年金(老齢基礎年金)はカット対象外です。また社会保険の加入要件を満たさない短期・短時間の働き方なら、在職老齢年金の計算には入りません。制度は改正されることがあるため、詳細は日本年金機構または年金事務所で確認してください。
Q. 年金受給中でも確定申告は必要ですか?
A. 公的年金等の収入が年400万円以下で、リゾートバイトなどその他の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です(確定申告不要制度)。ただしこの条件を超える場合は申告が必要です。また、源泉徴収で天引きされた所得税は、確定申告によって還付(払い過ぎ分の戻り)になることもあります。住民税の申告は別途必要な場合があります。出典:国税庁。
Q. 家族の扶養に入っていますが、リゾートバイトで外れますか?
A. 2025年(令和7年度)の税制改正で、扶養親族・同一生計配偶者の合計所得の要件が48万円から58万円(給与のみなら年収換算で約123万円相当)に引き上げられました。年収がこの基準を超えると所得税上の扶養から外れます。社会保険の扶養(健康保険の被扶養者)は別の基準で判定されます。改正内容は年ごとに変わる可能性があるため、最新の要件は国税庁または勤務先・社会保険事務所で確認してください。
Q. 短期のリゾートバイトでも税金はかかりますか?
A. 給与として支払われる場合は所得税が源泉徴収されます。源泉徴収された税額は、年末調整または確定申告で精算されます。年金受給者の場合、確定申告不要制度の要件を超えると申告が必要になります。少額の働き方であれば源泉徴収分が全額還付になることもあります。詳しい計算は国税庁または税務署に確認してください。
まとめ
- 在職老齢年金は2026年4月から基準が月額65万円に引き上げ。厚生年金に加入して働く場合でも、「年金の月額+その月の給与(総報酬月額相当額)」の合計が基準額65万円以下なら年金は全額支給される。国民年金(基礎年金)はカット対象外。社会保険に加入しない短期・短時間の働き方なら計算対象にもならない(出典:厚生労働省・政府広報オンライン)
- 確定申告不要制度を利用できるケースが多い。年金収入400万円以下かつ他の所得20万円以下なら所得税の申告は不要。ただし源泉徴収済みの税金が還付になることもあるため、確認の価値はある(出典:国税庁)
- 扶養の「壁」は2025年改正で引き上げ。合計所得58万円以下(給与のみなら年収換算で約123万円相当)が新しい要件の目安。ただし社会保険の扶養は別基準。詳細は国税庁・加入健保で最新確認を
- 制度は変わる。手続き前に公式で最新を確認しておくと損を防ぎやすい。年金事務所・国税庁・税務署・健保窓口を積極的に使う
お金の不安は、一つずつ確認していけば対処できます。見通しが立つと、温泉地や自然の中での住み込みという選択肢が現実的に見えてきます。
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